駿台教育フォーラム

発刊の辞

学校法人駿河台学園の創立者、故山﨑寿春先生は、明治三十五年、東京外大を卒業後、アメリカのアマースト大学に留学し、更にエール大学大学院で英語英文学を専攻し、帰朝後は各大学で教鞭を取っておりましたが、当時、既に多数の受験生が挫折感に苦しみ、迂遠な受験勉強に心身を消耗させている実状を深く憂い、かかる若者達に対する痛切な愛情から生まれた能率的な教授法によって、それぞれの才能を開発育成し所期の目的を達成せしめることに教育者としての生き甲斐を見出し、この生き甲斐を大学の講壇よりもさらに重しとされたのであります。かくて大正七年、本学園の前身である東京高等受験講習会が開催され、次いで昭和二年、駿台高等予備校が創設され、五年には東京府の認可を受けました。終生愛情教育をモットーとした創立者のこの建学の志は、以来風雪を凌ぎ、今日の隆盛を来したわが駿河台学園の隅々にまで滲透しており、全教職員の中に脈々と生き続けているのであります。

いま駿河台学園は、創設の日に劣らぬ熱情を傾けて、明日に希望をかけ今日をひたむきに生きようとする数万の若い人々に力を貸しています。これは日本の明日を創る仕事だと私は自負しております。価値観がかくも多様化した現代社会が、さらに未来へと発展するためには、それなりの努力が必要でありましょう。この努力が生まれる源泉は、高等教育によって培われた確かな知見と高度な技能であり、豊かな情操であると申せましょう。いま駿河台学園は、単なる受験教育の場ではなく、独自な人間教育の場であり、日本の未来を切り拓く有為な人材を育成することを不易の目的として掲げ歩み続けております。この目的の達成を目指す全校を挙げての努力の根幹をなすものは、創立の昔から本校が常に誇りとしてきた教授陣、多くの教授講師の熱誠溢れる授業であり、懇切にして厳格な教育指導であることは申すまでもありません。

本学の誇りであるこの教授講師の授業や教育は、主として教室内で行なわれていますが、これを少しでも教室外にまで拡大したいという願いから、今回、年刊誌「駿台フォーラム」が発刊されることになりました。本校の特色ある講義や教育を、広く公共の広場(フォーラム)で、活字を通して公開すべき時が来ていると判断したからであります。この年刊誌には、各教科の教授講師の秀れた講義の基盤をなす、それぞれの専攻する学術研究の成果や、その余滴などが載ることもありましょうし、又それぞれの人格識見を反映する人間観や人生論、学問論や社会批評、更には偶感随想の類いまで登場するかも知れません。この小冊子が、駿河台学園の教職員が互いに心を通わせ合う親しい談話室になるとともに、在学生諸君や日本の至る所で活躍している無数の卒業生諸子に、更には学園の志を同じくする様々な教育関係者に対し、駿河台学園が語りかけ問いかける心の広場(フォーラム)に育っていくことを願っております。

昭和五十七年十一月

学校法人 駿河台学園
学園長  山 﨑 春 之

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